《4月 14日の未来投資会議》 政府は29年4月14日の「未来投資会議」で、利用者の自立支援を促す介護報酬のインセンティブを拡大していく方針を決めた。2018年度の改定に具体策を盛り込む。より効果が出るサービスの内容を、蓄積したビッグデータの分析や研究によって客観的に明らかにしたうえで、広く国民に提示することも確認。2021年度の改定を見据え、その本格的な展開に結びつける手立てを検討していく計画だ。
右肩上がりの給付費を効率化によって抑制する狙いがある。出席した安倍晋三首相は、「どのような状態にどのような支援をすれば自立につながるか明らかにする。効果のある自立支援の取り組みが報酬上評価される仕組みを確立させる」と言明。「日本は少子高齢化に直面しているが、技術の力でピンチをチャンスに変えていく。直ちに施策を実行して欲しい」と指示した。
塩崎恭久厚生労働相は「科学的介護」と呼ぶ。この日はその実現に向けて、「世界に例のないデータベースをゼロから構築する」と宣言。サービスの種類や要介護認定といった基本的な情報にとどまらず、ケアの中身や利用者の状態の変化などより細かいデータを集めて検証し、効果の高いメソッドを発掘していくという。次の改定からインセンティブを拡大していく構想は、今年2月の会合で事務方が有識者などに提案していた。
もっとも、高齢者の心身の状態や価値観、生活歴、課題、希望は十人十色で、今の介護サービスが担っている役割は多様だ。業界の関係者の間では、行き過ぎた改革で利用者に寄り添うケアが軽視されるのではないかという懸念も根強い。自立支援に偏重した制度になれば、事業者が収益性の高い分野にリソースを集中させる「クリームスキミング」も問題になる。未来投資会議では「介護を早急に標準化すべき」との意見も出ており、サービスのあり方をめぐる論争がさらに活発になっていきそうだ。
AI活用の重点領域に「介護・認知症」
AI活用の重点領域に「介護・認知症」
塩崎厚労相はこの日の会合で、職員の負担を軽減するICTやロボットなどの技術を現場に取り入れてもらう観点から、次の改定で報酬や基準を見直す意向を改めて明確にした。政府内では当面の方向性として、現時点で一定の効果が見込める見守りセンサーや事務ソフトの普及を重視すべきとの声があがっている。今後、ロボットなどのハイテク機器の活用を後押しする「重点分野」を再検証したうえで、2018年度以降に指針とする新たな開発計画を策定する考えも示された。
塩崎厚労相はこのほか、医療・介護の分野で人工知能(AI)を用いる「重点6領域」も発表。画像診断や製薬、ゲノム医療などに加えて、「介護・認知症」を含めたことを明らかにした。また、日常的な健康指導や疾病管理をビデオ通話などで行う遠隔診療を、次の診療報酬改定で評価したいと説明。日本医師会もその協議に応じる構えをみせた